すべては、患者の笑顔のために。
向上する医療技術と広がる地域連携の輪

京都岡本記念病院 髙木 敏貴 院長

岐阜県出身、名古屋大学医学部卒。大学院卒業後は愛知県下の病院にて外科医長を経験、米国留学を経て、名大第一外科関連病院にて腹腔鏡手術の立ち上げ指導にあたる。その後、愛媛県の医院を経営、伏見岡本病院副院長、院長を経て、令和2年4月、京都岡本記念病院院長就任。専門・研究領域は、肝胆膵外科、腹腔鏡手術、腹部血流解析など。

Q 京都の印象はいかがですか?
京都は好きですね。都会すぎず、田舎すぎず、住心地もよくて。空海の考え方が好きで、東寺へもよく行きます。私自身は無宗教なので、信仰をしているわけではないのですが(笑)。

急性期病院としての 役割を果たす

「地域を支え、地域に支えられる病院」として、地域医療に尽力する京都岡本記念病院。質の高い医療を提供することを使命とし、「断らない医療」を実践する同院で、特に力を入れているのが、がん診療と循環器診療だ。「ともに患者さんのニーズが高く、命にかかわる疾患が多い診療科です。そこに必要な人材や資金を投じて地域の皆様に高度な医療を提供することは、急性疾患や重症患者の治療を24時間体制で行う急性期病院としての、当院が担うべき役割だと思っています」と語るのは、院長の髙木敏貴氏。今年1月には、ハイブリッド手術室を開設。外科手術と血管内治療を同時に行うことができる。他にも、消化器がん治療の選択肢として、身体に負担の少ない腹腔鏡下手術も広く適応を拡大して行っている。

とにかく患者の負担を 減らしたい

先端的な医療機器導入の背景にあるのは、患者への思いだ。「いかに患者さんの負担を軽くするかが重要です。今までは、高度な医療というと、お金がかかり、入院日数も長く、手術も大がかりなもの、というイメージがあったと思います。しかし現在では、身体的、経済的により負担の軽い治療方法で同様の効果が期待できる医療へと進化しています。私たちが目指すのは、高度な医療と負担の軽減、医療安全を同時に実現させること。また、そういった情報を共有する意味で、地域のかかりつけ医との連携も大切だと思っています」。

盤石な医療体制を 目指して

地域の開業医、さらには中小の病院、大規模病院も、本来は協同関係にある、と高木院長。「地理的な通いやすさや得意分野、また、早期に治療が必要な急性期、症状が安定した回復期で、それぞれ病院の役割は異なります。その役割分担がしっかりできれば、患者さんと生涯お付き合いしていく上での、協同のパートナーになれるはずです。そうやって一枚岩となり医療機関同士が繋がることを目指しています」。その一環として、地域の医師一人ひとりに声をかけ、症例検討会や勉強会の実施を進めているという。強固な地域連携が実現すれば、地域住民にとってこれほど安心な医療体制はない。同院は、久御山町にとってなくてはならない存在になりつつある。

地域医療連携の大切さを痛感

髙木院長が地域医療連携にこだわるのは、自身が開業医として苦労した経験があるためだ。当時は医療連携という言葉自体が存在せず、大規模病院へ患者を紹介しようにも、担当医の名前が分からない。なんとか紹介できても、症状の安定した患者を逆紹介される際には、紹介元の自分ではなく別の医者を紹介されてしまうなど、戸惑う出来事が多かった。「そんな中、近くの病院で初めて地域連携室ができて、劇的にスムーズになったんです。連携の重要性を身にしみて感じましたね。患者さんの入口としてかかりつけ医があり、それが小さな診療所であっても、最終的には高度な医療が受けられて、安心して療養でき、自宅に戻れる。そんな環境を作っていかなければと、強く思いました」。

コロナ禍の素早い対応が安心に繋がる

すべては、患者のため。それは、コロナ禍においても変わらない。国内で新型コロナが広がり始めた昨年春には、いち早く発熱外来を始めた。「当初は、症状が出てもどこへ行けばいいのか分からない、といった状況でしたよね。ですから、まずは受診ができて、検査が受けられるという状態にしました。PCR検査についても、『早く、広く』を念頭に、当時は多くの機関が翌日にしか出せなかった結果を、数時間で出せるよう体制を整え、職員はもちろん、入院患者さん全員に検査を行いました。また、陰圧室を増やしたり、紫外線殺菌装置を導入して陽性者が滞在した部屋も短時間で使えるようにしたり。他にも、オゾン発生装置の設置や、光触媒のコーティングなど、とにかく、良いと言われることは何でもやろう、と」。風評被害は気にしなかった。とにかく、患者の安全と安心のため、でき得る限りのすべてを取り入れてきたし、それは今後も変わらない。地域住民の心豊かな暮らしを第一に考え、寄り添うように支えてくれる。その姿勢に、医師として、そして医療機関として、私たちがこうあって欲しいと願う、理想の形を見た気がした

 仕事場拝見
久御山町の新型コロナワクチン接種に協力し、会場や人員の提供も行っている。
心臓手術や脳神経外科など、様々な領域で威力を発揮するハイブリッド手術室。将来的には、身体に負担の少ない治療法である「TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)」も可能に。
3密回避のため導入された、外来呼び出しシステム。診療受付後に渡される「呼び出し機」は、診療時間が近づくと音と画面で知らせてくれる。
2020年4月には厚生労働大臣から「地域がん診療連携拠点病院」の指定を受けた京都岡本記念病院。京都府災害拠点病院として、傷病者の受け入れや医療救護班の派遣が行える機能も備える。
 施設情報
 名称: 社会医療法人 岡本病院(財団)京都岡本記念病院
 所在地: 京都府久世郡久御山町佐山西ノ口100番地
 電話番号: 0774-48-5500
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