患者への思いやりと優しさがあふれる
城陽市随一の呼吸ケア技術を持つ基幹病院

南京都病院 坪井 知正 院長

京都大学理学部・医学部卒。日本呼吸器学会認定専門医、日本内科学会認定医。京都大学医学研究科非常勤講師。1980年代後半より睡眠障害治療のパイオニアである大井元晴医師の指導のもと、睡眠呼吸障害や慢性呼吸不全などに対する研究を開始。マスクによる人工呼吸NPPV療法を国内で先駆的に取り入れ、臨床成績を実証、その成果を世界に発信し続ける。

病院スタッフより…
「これまで様々な病院で働いてきましたが、坪井院長ほど温厚な院長は初めてです。臨床研究の時は毅然としていますが、普段はとても優しい方。患者会では手品を披露していました(笑)」

患者に負担の少ない 人工呼吸法を採用

城陽市・青谷梅林からほど近く、豊かな自然に囲まれた南京都病院。呼吸器センター、脳神経内科、小児科を中心とした国立病院機構であり、呼吸器疾患の診療が最も充実しているが、重症心身障害、パーキンソン病やALSなどの神経難病など、民間の急性期病院では対応が困難な疾患や障害を対象としたセーフティネット機能も果たしている。そんな南京都病院が強みとするのが、呼吸ケアだ。  在宅ケアが可能なNPPV療法から、気管切開などの外科的処置に至るまで、様々な療法に対応しており、臨床研究も積極的に行う。特にNPPV療法は、坪井院長が属するグループが国内で初めて導入した、マスクによる人工呼吸。気管切開の必要がなく、患者に優しい人工呼吸法として注目されている。坪井院長は「手前味噌ですが」と、はにかみつつ、「当院ほどの呼吸管理ができる病院はなかなか無いんです」と語る。「特にこの地域では呼吸器科のある病院が少ないので、開業医からの相談は、たいてい当院に来ます。地域の医師会とも、連携はよく出来ている方だと思います」。

患者のニーズに 寄り添う医療を提供

今年度より医療機関での療養介護の適用範囲が拡大されたことを受け、神経難病患者の長期入院も受け入れているという。3ヶ月以上の入院は病院の経営を圧迫するといわれているが…。「例えばALSや筋ジストロフィーなどでは呼吸筋が弱り、大きな息ができなくなるケースや、嚥下障害、無呼吸症候群を起こす場合があります。そういった方も含めて、専門的な治療が必要な方は、できれば長期入院させてあげたいな、と」。 また、小児科では重症心身障害者の診察のほか、アレルギー外来や肥満外来、また、発達障害などを対象とした診療も行っており、数カ月先まで予約が入っているという。「特に発達障害のお子さんを対象にした診察は、他にあまり無いんです。アレルギー外来などは大学病院にもありますが、混んでいたりもするので、こうして地域で行うというのは意味があるかなと思っています」。 撮影中も、通りすがりのスタッフや患者さんに、にこやかに話しかける坪井院長。聞けば、同院ではよくある光景だという。その柔らかい笑顔に優しさがあふれている。

誰もが地域で安心して暮らせるように

重症心身障害者の診療が中心の小児科においても、呼吸管理は重要だ。「小児科には人工呼吸器が60台ほどあります。出生時から人工呼吸が必要となるケースが多いのですが、そういったお子さんたちももちろん成長しますので、成人になっても小児科で診ています」。また、重度の障害があっても地域の中で暮らしていけるようにと、院内に「しらうめ」という通所事業所を設けている。「当院隣接の支援学校を卒業された方や、学校が夏休みのお子さんなどに多く利用いただいています。人工呼吸器を付けていても看護師が付き添って入浴サービスが受けられるので、喜ばれています。一生懸命生きている子どもたちを見ていると、命って大切だなと改めて思います。こういう『命を大切に紡いでいく医療』もあるということを、多くの方々に少しでも知っていただけたらと思います」。 院長の言葉一つひとつに感じるのは、患者に寄り添う温かい心と、医師としての強い使命感。それは、臨床研究にも表れている。

一筋の光にかけて臨床研究に取り組む

「新しい薬を作ることはここでは出来ませんが、既にある治療を組み合わせて、実際のケアに繋げる医療は可能です。治療が手詰まりになった時、何か少しでも患者さんのメリットになることをして差し上げたい、というのが研究を行う上でのモチベーションとなっています。若い医師のなかには、危ないからとか、副作用が強いからとか、やらない理由を考える方も多いのですが、少しでも良くなる可能があるなら試してみよう、ということを心がけています」。  坪井院長に今後の目標を問うと「患者さんのためになる臨床研究をもっと行っていきたい」と即答する。「うまく行かないことももちろん多いんですけど、それでもやっぱり病気が治せて、患者さんにも喜んでもらえた時はうれしいですね。あとは、若い医者をもっと育てたいと思っています。今は、天理よろづ相談所病院などから半年ごとに研修に来る優秀な後期研修医を直接指導しています。呼吸器科の中でも呼吸管理に精通した医師をできるだけたくさん育てたいのです」。 取材の合間にも患者さんからの電話が鳴り、院長自らが対応する。多くの論文を発表し、各地で講演を行うなど、その道の権威でありながら、尊大さを微塵も感じさせない。穏やかな笑顔をたたえながら、坪井院長は今日も奔走する。

 仕事場拝見
1分間に60Lという、従来より多くの酸素が提供可能な呼吸療法機器「ネーザルハイフロー」を使ったリハビリの臨床研究。運動量が増え、リハビリ効果が高まるという。
数多くの人工呼吸ケアの機器が揃っており、患者の状態に合わせて使い分けている。看護スタッフも、慢性呼吸不全や嚥下などの認定看護師が多く常駐する。
在宅の重症心身障害児(者)を対象とした通所事業所「しらうめ」。医師、看護師、保育士、児童指導員と、経験豊富なスタッフが常駐、地域に根ざした生活の場を提供する。
 施設情報
 名称: 独立行政法人 国立病院機構 南京都病院
 所在地: 〒610-0113京都府城陽市中芦原11
 電話番号: 0774-52-0065
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